建設業界の構造的課題と鹿島の挑戦
日本の建設業界は「2025年の壁」と呼ばれる時間外労働の上限規制と、深刻化する少子高齢化という二つの大きな課題に直面しています。鹿島建設は、この構造的変化を乗り越えるため、「技術革新」と「人財戦略」を両輪とした包括的なアプローチで未来を切り拓きます。
課題①：2025年の壁（時間外労働規制）
2024年4月からの規制適用は、生産性向上を必須とします。しかし、2022年時点で...
の非管理職が新上限を超える時間外労働を行っているというデータもあり、改革は喫緊の課題です。
課題②：人手不足と高齢化
熟練技能者の引退と若手入職者の減少は、技術継承の危機を招きます。鹿島の平均年齢は43.7歳。多様な人材が活躍できる環境構築が不可欠です。
出典：鹿島建設 2023年度データ、日建連 2022年調査
Pillar 1: 技術革新 - 生産性の飛躍的向上へ
人手不足と生産性向上の課題に正面から向き合うため、鹿島建設は技術革新を最重要戦略と位置付けています。現場を変革する代表的なDX（デジタルトランスフォーメーション）とスマート生産技術を紹介します。
A⁴CSEL®
次世代の建設生産システム。建設機械の自動化・自律化により、土木工事の生産性を大幅に向上させ、CO₂抑制効果も確認されています。
ロボット施工
墨出しロボット「ロボプリン®」やトンネル覆工コンクリート自動打設システムなど、危険で過酷な作業を自動化し、安全性と品質を両立します。
AI活用
画像解析による配筋検査やコンクリート品質評価、危険予知活動支援システム「鹿島セーフナビ®」など、管理業務の効率化と高度化を推進します。
BIM/CIM
3次元モデルを活用し、設計から施工、維持管理まで一貫した情報共有を実現。手戻りを防ぎ、生産プロセス全体を効率化します。
自動巡回ドローン
AIとドローンを組み合わせた資機材管理や、レーザ測量による土量管理など、広範囲の現場管理を自動化し、作業時間を75%削減した実績もあります。
3Dプリンティング
CO₂を吸収するコンクリート「CO2-SUICOM®」と組み合わせ、環境負荷を低減しつつ、複雑なデザインの構造物を造形する未来の技術です。
Pillar 2: 人財と文化 - 多様性が成長の源泉
企業の持続的成長の源泉は「人」です。鹿島建設は、DE&I（ダイバーシティ、エクイティ＆インクルージョン）を経営の中核に据え、多様な人財が最大限に能力を発揮できる職場環境と文化の醸成に取り組んでいます。
DE&I目標と実績
女性活躍推進や働き方の柔軟性向上は、業界のイメージを刷新し、未来の優秀な人材を惹きつける鍵です。具体的な数値目標を掲げ、着実に実行しています。
賃上げによる処遇改善
2024年度に全従業員の賃金を平均7%増額。特に若年層には10%以上引き上げ、人材への投資を強化しています。
働きがいと両立支援
男性の育児休業取得率100%を目指し、パートナーシップ制度も導入。誰もが自分らしく働ける環境を追求しています。
Pillar 3: 持続可能性 - 地球と共に未来を築く
「鹿島環境ビジョン2050plus」を掲げ、事業活動を通じて地球環境課題の解決に貢献します。「脱炭素」「資源循環」「自然再興」を3つの柱とし、社会と共にサステナブルな未来を目指します。
CO2-SUICOM®
製造過程でCO₂を吸収・固定化するカーボンネガティブコンクリート。脱炭素社会の実現に向けた鹿島の切り札となる技術です。
資源循環と自然再興
建設廃棄物の再資源化率97%を目指すとともに、社有林の保全や藻場の再生などを通じて生物多様性の回復に貢献します。
温室効果ガス排出量削減目標 (vs 2021年度)
サプライチェーン全体での削減を目指す野心的な目標を設定。これは、サステナビリティ・リンク・ボンドの発行にも連動しています。
2030年に向けた未来展望
中期経営計画（2024-2026）に基づき、鹿島建設は中核事業を強化し、未来を開拓します。既存事業の深化と新規事業の創出を通じて、社会へ新たな価値を提供し続けます。
国内建設事業の深化
スマート生産技術を実装し、再開発やエネルギー分野で価値創出力を強化します。
グローバル展開の強化
北米・欧州・アジアなど6拠点のネットワークを活かし、海外での収益機会を拡大します。
バリューチェーン拡充
建設ノウハウを不動産開発などに活かし、事業領域を拡大して収益を多角化します。
新規事業の創出
森林、海洋、さらには宇宙分野など、未来の社会を支える新たな事業領域に挑戦します。